『帰りに牛乳買ってきて』 は、著者であるはらだ有彩さんの20年にわたるルームメイトとの共同生活を描いたコミックエッセイです。
読む前は、女性2人の気楽なルームシェアを描いた作品だと思っていました。
しかし実際に読んでみると、ただの同居生活ではなく、「誰とどのような関係を築いて生きるのか」を考えさせられる作品だったと思います。
作中の2人を見ながら、自分の中に「一緒に暮らすのは恋愛関係や結婚関係にある男女」という固定観念があったことに気づかされました。
女性同士のルームシェアに対しても、どこかで「一時的なもの」「気楽でいいね」と捉えていた部分があったのかもしれない。しかし作中で描かれる暮らしは、そんな単純なものではありませんでした。
「暮らす」ということは、綺麗事だけでは行うことができません。時にぶつかりながら、それでも一緒にいたい。そんな2人の生活がリアルに描かれています。
読みながら、ふと阿佐ヶ谷姉妹 を思い出しました。彼女たちは長く同居生活を続けていて(現在は同じアパートの別の部屋に暮らしていたはずですが)、わたしからは「ただ仲が良いから一緒にいる」という印象を持っていました。
あの2人も、恋愛や結婚とは別の形で、ただ一緒にいることが自然だから暮らしているように見えます。
きっとこの本の2人もそれに近いのかな、と勝手ながら想像しました。一緒に暮らすことに大義名分が必要だと思っていたわたしにとって、2人の関係性は新鮮で少し眩しく感じました。
世の中には人の数だけ暮らし方があり、自分が知らない関係性もたくさん存在しているのだと思います。
私は夫と2人で暮らしています。たまたま結婚という形を選んでいるけれど、結婚しているからといって必ずしも一緒にいて落ち着く相手とは限らない。逆に、一般的な名前のつかない関係性であっても、互いに安心して暮らせることはあるでしょう。まさにこの本の2人のように。
大切なのは「夫婦」「恋人」「友人」といった呼び名ではなく、当人同士がどんな関係を築いているかということなのでしょう。
また、この作品を読んで印象的だったのは、一般的ではないと見なされる関係性が、周囲からの不躾な視線や偏見にさらされることでした。
他人からの評価って、なんなんでしょうね。もちろん、結婚という「一般的な」選択をした人でさえ、「子どもはどうするの?」「専業主婦ってどうなの?」なんて他人のあなたに関係あります?なことを聞かれることはある。この本の2人のように「一般的でない」関係性を築いている場合はきっとわたしの想像の何倍もそのような評価にさらされてきたのでしょう。
私は読む前、この物語を気楽なルームシェアの話だと思っていました。実際、日常の些細なエピソードからはルームシェアの楽しさも存分に伝わってきて「こんな人生もいいな」と憧れのような気持ちを抱きました。
しかしそれだけにとどまらず、社会の中で「普通」とされる価値観でははかれない人たちのリアルにも触れた作品でした。
読み終えた今は、暮らし方や関係性に正解はなく、それぞれの人が自分にとって心地よい形を選んでいいのだと感じています。
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