高濃度の読書好きあるあるを浴びられる漫画があります。『バーナード嬢曰く。』がそれ。読書が少しでも好きなら、「わかるな〜」という部分が必ず見つかる、読書家ホイホイな作品です。
主人公は、自らを「バーナード嬢」と呼べと言う高校生・町田その子。読書家に憧れる彼女は本を読むこと自体よりも、いかに読書家らしくいられるかに日々心血を注いでいます。
図書館に通う彼女の周りに集まるのは、こちらはちゃんと本を読む人たち。SF好きな神林、流行りの本を流行りが過ぎ去ってから読むことを楽しみとする遠藤、図書委員でシャーロキアンの長谷川。
個性あふれる彼女たちが、放課後の図書室で本について取り止めもなく語り合う様子がテンポの良いギャグタッチで描かれています。
読んでいて思うのは、単純に「こんな友達ほしかった!」ということ。
わたしも一端の読書家として、本についてあれこれ語り合える友人の貴重さを知っています。本の話をできる友人関係って意外と限られていて、特に高校生になってからは図書館にこそ通うものの読書仲間と言える友人はいなかったと思います。
わたしも約束するでもなく放課後に図書館に集まって、読んだ本や読んでない本についてうだうだと語り合う青春を送りたかったな〜。本好きなら憧れるシチュエーションではないでしょうか。
この漫画の良いところは、主人公である町田その子がエセ読書家であること。本当に本を読みまくる人しか出てこなかったら本についての話が煮詰まりすぎるところを、彼女がいい感じに中和してくれています。
神林が、読書家が陥りがちな傲慢さ(これを読むなら先にあれを読め!等)に気付かされる描写などは読んでいるこちらも身につまされる思いがしました。
この漫画は、読書あるあるがふんだんに盛り込まれています。くすりと笑えるもの、激しく共感するものばかりで、読んでいて読書のおもしろさを多方面から味わわせてくれます。
例えば、「新潮文庫の100冊フェア」の限定ブックカバーについて遠藤が思うこのシーン。
そーいう特殊な限定カバー……
本棚に並べた時
同じ文庫なのに一冊だけ
紙質とか違っちゃってるせいで
統一感が取れなくなって
それが後々ストレスに
感じたりするから
全然欲しくならない
んだよな……
3巻p37
「限定ブックカバー、いいよね!」と盛り上がる町田と長谷川を横目にこう考える遠藤。わたしは遠藤と同じ理由で特殊カバーは買わない派なので、うんうんと頷きながら読みました。
こんな感じで、『バーナード嬢曰く。』に出てくるエピソードはどれもけっこう突っ込んで描写されていて、「そんなにはっきり言っていいの!?」と心配になるシーンも割とあります。
でも、読書をする人間からすると「普段人には言わないけど感じていること」が多く明文化されていてニマニマしてしまうのです。
まるで、読者であるわたしも彼女たちと一緒に図書室でだべっているような感覚。
でも、読んでいて思うこともあります。それが「みんな読んだ本の内容をしっかり覚えていてすげー」ということ。
例えば図書室に蜘蛛が出たとき、蜘蛛にまつわる本のエピソードを順番に出していく話など。わたしは読んだ本の内容をあまり覚えておけないタイプだから、彼女らが話題に合わせてたくさんの本の話をしているのを単純にすごいなと思いながら眺めています。
もうひとつ、この漫画で語られる小説は、SFやミステリなど海外作品がメインです。神林はSFオタク、長谷川はミステリ好きと、登場する(本物の)読書家の好みがそうなので致し方ない。
現代日本文学を好んで読むわたしには知らない作品が多く登場します。「これは名作だよな」とか「定番だよね」みたいに紹介される本を普通に知らなかったりする。
読み始めは「自分と読書傾向がまったく違うけど楽しめるだろうか……」と心配だったが、それは杞憂でした。自分の知らない小説をたくさん知ることができるのは普通に楽しいし、一口に読書と言ってもいろんなタイプの読書家がいるんだよな、という気づきにもなりました。
なので、読んだことのある本が出てきたらよりうれしいのは前提として、わたしのように読書傾向が違う場合でも充分に楽しめる漫画になっています。
読書に関するあるある作品として、これほど完成度の高いものはなかなかないのではないでしょうか。
単純なわたしは、『バーナード嬢曰く。』を読むと本を読みたくなります。まずは山のように積み上がった積読本から手をつけてみようかな。

