『本なら売るほど』感想──十人十色な本との関わり方を肯定してくれる漫画

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Amazonより

『本なら売るほど』。本が好きならつい目に留めてしまうタイトルの漫画だ。

書店で見つけて、表紙の雰囲気や装丁に惹かれて購入した。


この漫画の舞台は、街の小さな古書店「十月堂」。脱サラして店を継いだ店主と客が、本を巡ってさまざまな物語を展開する連作集だ。

いわゆる読書家だけでなく、本に特別な思い入れのない人も登場し、それぞれの生活の中にある「本」との距離感が丁寧にすくい取られている。

古本屋は本と本好き相手の商売かと思いきや

本に興味ない人が本を捨てに来る場所でもあった

p8

冒頭でこう語られたとき、これはただの「本好きによる本好きのための」漫画ではないのかもしれないと気を引き締めた。


わたしが特に好きなのが、マンションの一室に書庫を作る人の話だ。

まず彼の主張はこうだ。

一冊の本はそれ自体が宇宙だ

紙の厚さ

手触り

インクの匂い

活字の形

大きさ

色とりどりの背表紙

魂を感じる装丁

僕にとっては全てが物語の一部です

p108

ああ、この人は本当に「本という存在」そのものを愛しているのだなと思った。ただ物語を読むだけではなく、本が含むものすべてを。わたしも同じ思いを抱いているからその気持ちがよくわかる。

そう思いながら読み進めると、彼についてある真実を知ることになる。

中身はほぼ手付かずです

僕 読めないタイプの本好きで……

p121

彼の書庫作りの手伝いをしていた青年と同時に、読み手のわたしは衝撃を受けた。

読めないのに、3千冊の本を所有している。読めないのに、立派な書庫を作ろうとしている。読めないのに……!

そして、それでもいいんだ、と世界が開ける思いがしたのだ。


最近のわたしは、本を読むことに対して葛藤を抱えていた。

読書は相変わらず好きだ。しかし、読みたい、ほしいと思う本が増えるスピードに対して圧倒的に読書量が少ない状態が続いている。

理由はわかっている。読んだら必ず感想を書くことにしようと自分に課題を課してから、こういうことになっているのだ。

いざ本を読もうと思ったとき、「せっかく読むならあとで感想が書きやすいようにアンテナを張って読まなければ」という思いがちらつく。それが強いプレッシャーとなって、本を開くことができなくなっていた。

今、『本なら売るほど』を読めたのは、最高のタイミングだったと思う。この漫画はわたしに、「本との付き合い方は自由でいい」と教えてくれたから。

たくさん読むだけが本好きではない。ましてや本について多くを語ることも、本好きの資格ではないのだ。

本を読んでいる時間だけが本との時間じゃない。何を読もうか考えて、探して、出会って、持ち歩いて、本棚に並べる。そのすべての時間が「本」であり、この漫画はそんな「本」を描いている。


本当に、ため息が出るくらいすばらしい漫画だった。苦しさも幸せもはらんだため息。

本を扱うということは、人それぞれの本の扱い方に触れるということでもある。それはときに胸が潰れるくらいつらいこともある。

そんな「本が好きだから」という気楽な理由だけではとても続けられない古書店店主という仕事を描いた良作だった。

本が好きという気持ちはあるけれど、最近うまく読書ができていない。そんなわたしのような人に大きく響く漫画だと思う。積読に罪悪感を抱えている人にもぜひ読んでほしい。きっと、本を読むという行為の純粋な楽しさを思い出させてくれるから。

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